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EmbroNEWS~“工場の裏側”~

皆さんこんにちは!

刺繍店Embro、更新担当の中西です。

 

さて今回は

~“工場の裏側”~

 

刺繍の品質は設計(パンチ)×固定(枠張り)×条件(針・糸・速度)×検品の掛け算。ここでは現場の標準手順KPI運用、さらに3D・チェーン・アップリケなど特殊刺繍の勘所まで公開します。


1|量産ワークフロー(標準化が最強)

  1. データ確認:針数・密度・下打ち・トラベルの無駄削減

  2. 試縫い:同質生地・同芯材で再現→糸締り・縮み・段差チェック

  3. 量産条件表:針番手/糸番手/上糸・下糸テンション/速度(帽子=低速

  4. 枠張りSOPテンション一定・位置治具・方向統一

  5. 本縫い糸始末検品袋入れ


2|針・糸・芯材(安定の三角形)

  • :9〜14号(細→厚)。**球状(ニット)/先尖(布帛)**を使い分け

    • レーヨン=発色・ドレープ◎

    • ポリエステル=強度・耐塩素◎(ユニフォーム向け)

  • 芯材カットアウェイ/ティアアウェイ/水溶性フィルムを生地と図案で選択

  • 密度:サテン0.35〜0.45mm、フィル0.4〜0.5目安(縮み・糸切れとトレードオフ)


3|キャップ刺繍のコツ(難所攻略)

  • センター割れ対策に中央から外への縫い順

  • ブリム干渉を避け低速運転

  • 発泡(3D)はサテン密度UP+余糸熱処理で角を立てる


4|アップリケ・ワッペン(歩留まりを上げる)

  • ダイカット台紙タックダウン周囲サテン

  • 熱接着(ヒートシール)で貼るだけ施工もOK

  • 大判は生地縮みが小さく針数削減=軽さも実現


5|品質基準(抜き取り検査)

  • 位置許容:±2mm(胸・袖)/±3mm(背中)

  • 糸始末:浮き糸・渡り糸なし/裏面ループなし

  • 縫い欠け・色違い:即是正

  • 洗濯テスト30〜40℃×5サイクル縮み・色落ち確認

  • 金属検針:子ども服・ユニフォームは全数が安心


6|納期短縮の技術 ⏳⚡

  • 色替え最適化:同色の案件を束ね縫い

  • 多頭機の活用並列×段取り替え短縮

  • 治具:襟・袖・ポケット用位置治具秒で枠張り

  • 段取り表:1日の色順→ボディ順移動ムダを削減


7|KPIダッシュボード(週次)

  • 不良率(位置・糸切れ・縮み・汚れ)

  • 1人当たり枠張り回数/時

  • 機械稼働率・段取り時間

  • 再縫い発生率(原因:パンチ/枠張り/条件)
    数字→対策→期限を1枚で可視化


8|メンテナンスのルーチン(止めない)️

  • 毎日:針板・押さえ・送り歯の糸くず清掃/注油

  • 週次テンションディスクの清掃・ボビンケースの糸溝確認

  • 月次タイミング・エンコーダ点検、フレーム調整

  • トラブル:糸切れ多発→針劣化・テンション過多・角度を疑う


9|サステナブル刺繍

  • 再生ポリエステル糸コットン糸の選択肢

  • 端材でミニワッペン補修セットにアップサイクル

  • 紙資材・個包装の見直しでごみゼロ運用


10|特殊刺繍(メニュー拡張)✨

  • 3D発泡:立体ロゴ。角丸デザインが映える

  • チェーンステッチ:ビンテージ感。スウェット・ジャケットに

  • サガラ(パイル):モコモコの存在感。下打ち強め+低速

  • メタリック糸:ポイント使いで映える(速度低・テンション緩め


11|クレーム“未然防止”️

  • 縮み・波打ち:密度過多→下打ち調整・芯材格上げ

  • 位置ズレ治具導入二人体制検品

  • 糸ほつれ熱カット+裏面接着洗濯注意書きを同梱

  • 色ブレ糸色スワッチ承認初回必須


12|チェックリスト✅

  • ☐ データ承認(針数・色数・サイズ)

  • ☐ 生地別:芯材選定/下打ち設計

  • ☐ 枠張りテンション・位置治具

  • ☐ 量産条件(針・糸・速度・テンション)

  • ☐ 試縫い合格(洗濯・摩擦)

  • ☐ 糸始末・検品基準・袋入れ

  • ☐ 納期・段取り表・出荷ラベル


まとめ
標準化(SOP)×数字(KPI)×道具(治具)で、刺繍の品質とスピードは同時に上がります。次の一歩は、量産条件表のテンプレを作り、治具写真付きの枠張りSOPを現場に貼ること。今日から工場はもっと強くなれます。